ニコチン中毒

アメリカの映画やドラマに出てくるAA(アルコール中毒者の自助組織)風に自己紹介すると、「Hi, my name is Sugiko and I am nicotine addict (私の名前はスギコ、そしてニコチン中毒です)」っていう感じである。

しかし私はごく軽度の中毒者なので、去年は3箱くらいしか吸っていない。今年はまだ1本も吸っていない。でもイライラすると心の底からニコチンを摂取したくなる。ニコチンの何がいいかというと、タバコの煙を吸うことでニコチンその他の化学物質が一瞬で脳に回って、脳がしんなりする感じがよいのである。ものすごい快感というわけではないが、一瞬じんわり麻痺する感じが気持ちがよい。ただ、毎回その気持ちよさが得られるわけでもないので、そこが難しい。時々たまに吸うと、脳がニコチンに反応してふんわりする。

ここでは主観的にニコチンが脳に影響するさまを描写しているだけだが、ニコチンを何らかの違法薬物と置き換えても違和感なく読めてしまうであろう。

それもそのはず、現在の脳科学の知見によると、アルコールでも薬物でもギャンブルでもセックスでも、脳の中に一度それに起因するドーパミン快楽の回路ができちゃうと、一生そのままなのである。だから中毒の対象が何であれ、脳で起きていることは同じらしい。

よってニコチンに懲りた私はそれ以外の中毒性の高いものは(アルコールと砂糖を除いて)避けるようにしている。一番危なそうなのはスマホのゲームとパチンコ。絶対やらない。あれにはまったら日常生活が崩壊しそうでガードを上げている。テトリスですら避けている。

いずれにせよストレスを感じると、ニコチンがもたらすふんわり感を求めてしまう。しかし忙しくてタバコを吸いたかったことすら忘れてしまうので、幸か不幸か今年はまだ実際に吸うまでには至っていない。

あと、私は必要な時に1本のタバコを吸いたいのだが、一箱、20本買わなければいけない現在の日本のタバコ販売システムに困惑している。1本100円でいいからバラ売りするわけにはいかないのだろうか? 20本買っても、吸いたいのは最初の1本だけなのである。だから1本吸って残りは喫煙所に置いて帰ったりする。ハリウッド版のドラゴンタトゥーの女ダニエル・クレイグが同じようなことをしていた。喫煙しつつ基本的に禁煙を続けるのはかなりの努力を要するものなのである。そんなことなら全面禁煙したほうが楽じゃんとよく言われるが、一応これでも中毒なのでいったん覚えた快楽を手放す気にはならない。

嫌煙家の人々はニコチンがこのように脳に作用することを知らないからタバコを毛嫌いするのであろう。ニコチン中毒にならずにすんで大変ラッキーなことである。私なんて、今や遭遇頻度が大きく減ったが、道でタバコを吸っている人がいたら必ず深呼吸して副流煙を味わうようにしている。

一度中毒になったら一生中毒。軽度のニコチン中毒でこの程度である。違法薬物で中毒になったらそのあとクリーンでいるのがどれだけ大変なのか、ちょっと想像がつかない。