猫が逃げた

しばらく前に猫が脱走してしまった。
人には馴れなかったが、私たちの生活には順応して共同生活ができるようになっていのに。ある日マンションの外廊下の清掃のおじさんたちが来て、その音に驚いたのと、外階段へのドアが開いていたのとで、外に出てしまったらしい。

すぐに猫探し専門コンサルタント(※)を雇って1,000枚チラシをまいて張り紙もしたのだが、善意の誤情報しか寄せられない。そして今まで知らなかったが、似た猫が近所にたくさんいる。柄が同じというだけで、チラシを見た人たちが電話をくれる。同じ猫について違う人たちが電話をくれるので、違うと思いつつ現場に行って「また君か」ということがよくあった。

一番印象的だったのは、「おたくの猫ちゃんですが子供の通う学校の隣の空き地で紋白蝶を追いかけてて、楽しそうでしたよ」という情報。明らかにうちからかなり遠いので見にも行かなかったが、ここまでくると善意なのか冷やかしなのかよくわからない。

それなのに確度の高い情報はまだ一度も寄せられていない。とても怖がりで慎重な猫だからまだどこかに隠れているのだろうか? それとももうどこかでのたれ死にしてしまったんだろうか?

生意気で自分勝手で感謝の心のかけらもない猫であったが、いなくなるとそれはそれで寂しい。もう見つからないんだろうか。

※ ものすごく高級な表現をしたが、逃げた猫探しを生業にしているおじさん。すごく変わった人で、ずーーーっとしゃべってる。人はいいのだが陰謀論者なので、時々「え!」みたいな発言をする。色んな商売があるなー。