美容院

ここ8年くらいずっと同じ美容院に通っていた。男性の美容師でわりに私の言いたいことをわかってくれる感じだったので、毎月通っていたのが、だんだん通う理由がなくなっていった。

混んでいる時にはやたら待たされるし、伸ばすと何度も伝えているのにどんどん切られて半年たってもなかなか髪が伸びない。何より以前の彼の理解力みたいな感性みたいなものがなくなって、仕上がりが気に入らない。敢えてそんなことは指摘しないし、それで半年くらい様子を見ていたが何も変わらないので別の美容院に行ってみた。

新しい美容院は大手化粧品メーカーの直営店で、有名なビルに入っている。電話したら何とかディレクターとかいう一番指名料の高い人が担当になった。

そこでパーマとカラーを一度ずつ頼んだのだが、施術の途中でダメ感があった。まず、2回ともろくにカットをしない。パーマをした時も形ばかりチョキチョキしただけである。そしてショートカットなのに左右の長さが違う。だって切らないんだもん。家に着いてから気づいたので後から文句を言ったりはしなかったが、あの値段でこのレベルかと判断するよい材料になった。よってこの2か月間私は意図しないアシンメトリーなショートカットで過ごした。

しょうがないのでそこは早々に諦めて次を探すことにした。でも美容院は数が多過ぎてどうやって探したらいいのかわからない。ネットの口コミは当てにならないし、青山や表参道ならいい美容院が揃っているだろうが、うちから毎月通うなんてムリである。

とりあえず大手の美容院は美容師が勤め人感覚であまり緊張感がないような気がしたので、近所のインディペンデント系を試すことにした。

でもどこがいいのかよくわからない。「よい美容院の探しかた」みたいなハウツーを読み漁っていたら二駅先の小さな美容院が検索していないのにひっかかった。HPを見たら悪くはなさそうなので、今日はそこに行って来た。

まず、左右の長さが違うのは「わざとだと思った」と言われてしまった。そんなことわざとやるほど私はおしゃれではない。とにかく多くは望まないので、今の感じで整えて、基本的には左右対称にと依頼した。

今日は30代前半くらいの若い男性の美容師であった。これまでの経緯を語りつつ、いい美容院を探し中と軽くプレッシャーをかけたら、かなり頑張ってくれたようである。

私の業界でもそうだが、美容院でももしかしたら若手のほうがよいのかもしれない。若いほうが最新の技術に通じていて、勉強熱心で、流行にも敏感である。そして何より努力もしている。特に大手やチェーン系の美容院である程度のポジションにいくと固定客もつくし、指名料も高くなる。そうするとその分多くの客をさばかなくてはならない。ただ、そこまでいくとガツガツしなくてもやっていけるし、全ての客に全力で施術していたら体がもたないので、意図しなくてもパフォーマンスは落ちるのではないだろうか。なかなか難しい問題である。

今日の美容院は独立して一年以内だそうで、今が頑張り時である。その分熱意と努力と率直さが感じられた。今度こそいい美容院に当たったのならいいなと思う。ただ、そこも売れて人気になればパフォーマンスが落ちていくのかもしれず、そしたらどうしようと思うが、そんな先のことまで考えてもしょうがないので心配するのはやめにした。