12国記の中の官僚機構について

一年前に書いた長文が出てきた。すごく12国記が好きで、繰り返し読んだときに書いたもの。

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12国記とは小野不由美氏による大人気ファンタジーノベルで、中国に似た国々の話である。舞台が工夫されていてなかなか面白い。文明は高度に発達しているのだが、工業面においては第一次産業革命前の状態である。その理由は燃料となる石油や石炭が存在しないから。厳寒の国々でも炭と薪以外では家を暖めるすべがない。だから大規模機械産業が生まれず、電気もガスも、ましてやインターネットも発展し得ない。でも魔法があるので、例えば伝書鳩ライクな鳥を飛ばすとその鳥が留守電のように一言一句たがわず自分が話した内容を相手に伝えてくれる。その仕組みは魔法だから当然ながらブラックボックスで、なんかわからんけどそういう機能があるというだけで説明がつく。

全体の世界は我々が住む地球のように自然発生的に生じたものではなく、天帝という神が実際に創造したものなので、国がいくつもあるけど共通言語はひとつ、大枠の制度や考え方もひとつに統一されている。世界が始まって千年以上はたっていると思われるが、言語も制度もそれぞれの国で独自の発展を遂げることはないらしい。バベルの塔の前の状態がずっと続いていると考えればいいのかも。

そのなかで一番気になるのが官僚機構である。
12国記の中で軍人を含む官僚は不老不死という設定になっている。各人が官僚になった時点から不老不死がスタートする。よって20才で不老不死になった者と65才で官僚に取り立てられた者の間には見た目の年の差が大きく現れる。実際には20才の見た目の者が300才で、65才のほうが67才ということもあり得る。だから見た目から推測される年齢が何の意味も持たなくなる。

更に官僚は不老不死なので、自分から退職を申し出ない限り永遠に働き続ける運命にある。ただ、いくら好きな仕事でも80年くらい続けてたら飽きるのではないだろうか? ノウハウが蓄積されるという利点はあるが、それを返せば即ち汚職収賄の温床にもなりやすいということでもある。異動という仕組みはあるのだろうか?

技術職である冬官という職種は政権交代のあおりを受けにくいので、何百年と同じポジションにあることも珍しくないという。産業革命前の技術職って、つまり鍛冶屋とかパン屋とかレンガ職人とかそういうレベルの話である、多分。300年間ずっとパンの研究とか技術改良とかやってたらいくら情熱的な職人でも厭きないだろうか? しかも革新的な産業の変革が起こり得ない世界での話である。工夫と言っても粉の配合を変えるとか工程を調整するとかそんな程度の話で、分野横断的にかまど技術者と協力して一度に100個のパンを焼く発明とかはできないわけである。仮にイースト菌に着目したって、顕微鏡も冷蔵庫もないから一定の条件下にある実験環境を確保できず、再現可能な実験結果を得るのが非常に困難になると思われる。だからパンの発酵時間を半分に短縮するイースト菌の発見とか発明も難しそう。そんな中300年ずっとパンの研究できるのか? というのが第一の疑問。

何も技術職じゃなくてただの書記とか郵便係とか、門番でもいい。監視カメラやプリンターがない世界なので、人間が自分でやらなくてはいけないことはたくさんある。その分不老不死の官僚も様々な職種で必要になる。でも300年、いや仮に50年でもずっと門番なんて考えるだけでうんざりである。ただ、中世ならみんなそんなもんだと思って与えられた身分を受け入れて生きたのだろうから、そういうものという諦め(すりこみ?)があれば、ベテラン門番として500年働き続けることも可能なのかもしれない。

我々の世界なら真面目に務めて気が利くところを認めてもらえれば昇進したり、転職したりといったオプションがある。だが、不老不死の世界では異動や人の入れ換えが極端に少ないと思われる。だって誰も死なないし、病気にもならないから。定年退職もないし。そうすると、昇進には才能よりむしろコネクションが重要になってくると考えられる。また非常に限られた人数しか官僚という特権階級に上がることができないので、真に才能がある者が認められず、運がよいだけの凡庸な者が何百年も生き長らえるという不公平も頻繁に起き得る。(誰でも最後は死ぬという公平性がない世界のいびつさをつきつめるときりがないし、現代にも様々な形の社会的不公平が存在するので、12国記の世界が極端に悪いとも言えないと思うが。)しかも一度官僚になったらクーデターとか政権交代とかない限り文字通り永遠に官僚である。やる気のないやつもクビにならない(多分)。そのため仮に12国記と2020年1月時点の地球の世界で人間の本質がそれほど変わらないとするならば、12国記の官僚機構はごく一部の例外を除いて汚職と腐敗の温床にしかならないのではないか。

我々の世界で人間は多かれ少なかれ富の蓄積を心がけるが、12国記の世界において一般人はまず最短で不老不死ステータスをゲットしようとするのではないか。金は不老不死になってから稼げばいい。そうなると、どんな手を使ってでもまずは不老不死になろうとするし、不老不死の特権を付与する立場の官僚はものすごい権限を持つことになる。やばー。ゼネコンの利権どころの話ではない。一部の官僚の腐敗と堕落によって不老不死人口が増えていったらそのうち食糧難とか変な病気が発生してゾンビの徘徊するウォーキングデッドの世界が生じてしまう危険もある。それを防ぐための安全装置についての記述は私が記憶する限りシリーズ内にはなかった。

また12国記の世界では次世代の才能や勢いをまんべんなくいかすこともできない。こちら側では新しい世代が新人類とかゆとり世代とか言われながら社会に入ってくることで、産業や技術だけではなく社会全体の考え方や価値観も少しずつ入れ替わり、シフトしていく。しかし旧態依然の価値観をもった不老不死の官僚が永遠に居座る社会は硬直化して変化も新しいものも受け入れず、現状維持を固守する組織となりやすいのではないだろうか? 大多数の庶民は生まれて死んでいくが、その中で生まれる新しい潮流や変革は上層階層には極めて伝播しにくい。

そう考えると、我々が生きて死ぬことにも大きな意味があると思わされる。死は個人的なレベルではひとつひとつが悲劇であり、我々人類の原始時代から変わることない不安の根源なのだが、不老不死もかなりやばい。入れ替わり立ちかわり、私たちは生きて死んで、人類はよくも悪くも進化だか変化して技術は発展していく。生と死は終わりと再生であり、不老不死は硬直と永遠である。終わりがあるからまあ人生頑張ろうと思えるが、終わりがないことの不毛さと退屈さを考えるとそれはそれで途方もなく虚しいような。

というようなことをここ2か月くらいずっと考えていた。小説のメインテーマでも何でもないところに異常にこだわって我ながら偏執的である。

連休30kmチャレンジ

この三連休に一度は山に行きたかったが、また緊急事態宣言が出たのでお上の指示に従って外出はやめにした。そのかわり、3日で30km走って、なおかつリクルートのキャリアシートの執筆(?)を完了させることを課題にした。

キャリアシートは同じような項目がたくさんあって、書いているうちに頭がおかしくなってきた。なるべく内容がかぶらないような記述を心がけたが、最後は書くことがなくなって文学的表現に逃げた。(カオスから秩序を取り戻すとか、書いている自分もハテナ。しかし採用側もどうせ斜め読みしかしないであろう。)

とにかく、午前中はキャリアシートを書いて午後は毎日10kmずつ走るというプランである。しかし2日で13kmと16km走ってしまったので、今日は7km弱を走るにとどめた。もうそれで膝が痛くなって、これはフルマラソンで膝を痛めたときと同じパターンである。しばらくは短距離を走るにとどめよう。

そんな感じで、平穏な連休が終わる。
タスクを終えた今はリラックスして、最新の若者トレンドをキャッチアップすべく呪術廻線を読んでいるが、最近の漫画は複雑で理解するのが大変。呪術を使える人と呪術がこもってる道具を使う人と、呪いを体現する人といろいろいて、読者は全部理解して楽しんでいるわけ? 味方が敵になったり、契約結ぶと敵が助けてくれたり、ルールが多過ぎてついていけません。鈍い私は一回読んだだけだとぜんぜんわからないわ。

Fitbit Alta HRを買った

自分へのクリスマスプレゼントとしてFitbit Alta HRをアマゾンで買った。

前々から睡眠の記録をとりたかったのと、毎日の運動量を把握したかったので買った。ジョギング用にはエプソンのSF710を使っているのだが、これは運動するときしか記録がとれず、しかも大きいので一日中手首につけるようなものではない。

最初はガーミンを検討していたのだが、アマゾンのカスタマーレビューを見るとFitbitのほうが正確だということなので、Fitbitにした。

よいのは睡眠の記録が心拍数とか寝返りとかのデータからとられているので、正確な感じがすること。睡眠スコアがつくので、目安があってよい。

深い睡眠、浅い睡眠、REM睡眠、起きてる時間を分けて記録してくれるから、その結果と自分の起き抜けの感じが比較できる。酒飲んで寝たから深い眠りが少なかったなーとか。

更に上位モデルには「スマートウェイク」というのがあって、朝眠りが浅くなっているタイミングで起こしてくれるものもある。それを後で知って少し残念だったが、あまり大きなガジェットを手首につけるのもイヤなので、大きさが変わるなら今のでよいかなという感じ。

その他一日の歩数や運動量、消費カロリーなども記録してくれるので、ダイエットやトレーニングの予定もたてやすいし、モチベーションアップにもつながる。

別売りの体重計を買うと、体重計に乗っただけでデータが自動でクラウドに飛ぶので日々の体重管理が楽になる。ただ、体重計そのものが17,000円とか15,000円とかする。つられて買いたくなったが、一日30秒の手入力の手間を省くためにそこまで高い体重計を買う必要もないと思ってやめた。説明を読んだ限り、その体重計に何か特別な機能がついているわけでもないらしい。普通に体脂肪と体重を計るだけ。体脂肪データは不正確との情報もAmazonレビューでは散見された。

それから歩数とか歩いた距離の計測もあまり正確ではない。昨日は13km走ったが、その他は出歩いていない。それなのに15km移動したことになってる。明らかに距離が不正確である。それは他のユーザーにも指摘されているし、Amazonレビューにもある。この点については改善を待ちたい。

その他よいのは、一時間に最低250歩歩こうという独自の設定があること。手首に軽くブルブルがきて、そろそろ歩こうとお知らせをしてくれる。座りっぱなしがいかに健康に悪いのかという研究が最近進んでいるので、現代人のライフスタイルにおける運動不足対策もしてある感じである。普段仕事をしてたら、なかなか一時間ごとに歩こうという気にはなれないので、リマインド機能があるのはよい。

有料サブスクリプションにすると、もっと細かいデータやヨガや瞑想プログラムなどにもアクセスできるようだが、無料でも十分なデータがとれると思う。あと見たところ英語のプログラムが多そうで、どこまで日本語のものがあるのかよくわからない。

残念なのは機械翻訳の日本語が多いところ。お客を掴みたいならわかりやすい日本語できちんと説明しないといけないのに、ところどころで適当な機械翻訳もしくは英語の説明をアップしてあるだけになっている。スマートウォッチとアプリそのものは悪くないと思うのに、日本ではそこから有料サービスを選ぶ人は少なそう。

パニッシャー(シーズン1)

Netflixのシリーズもの。デアデビルジェシカ・ジョーンズ、ザ・デイフェンダーズと同じ系列で、デアデビルのスピンオフ。

ジェシカ・ジョーンズはグダクダしすぎ、デアデビルはシーズン1のフィスクとの戦いはよかったが、シーズン2がつまらなくて挫折しちゃった。ルーク・ケイジはそもそも趣味じゃないから見ていない。そんな中、期待せずにパニッシャーを見始めたのだが、シリーズの中で一番面白かった。

登場人物それぞれの生き方やあり方が丁寧に描かれていて、ストーリー展開に説得性がある。特にマイクロとフランクの二重性がものすごくよかった。

家族をなくしたフランクと、自分が死んだことになっているので家族に会えないマイクロ。フランクがマイクロにかわって家族に会い続け、不完全ながら父親の役割を果たそうとする。しかし危ういバランスの上で成り立つ関係は、そのうちマイクロの妻のサラがフランクにキスしたことで崩れ始める。動揺してフランクとぺニスの大きさ比べをしようとするマイクロ。それが数少ない笑えるシーンだった。男が行きつくとこはやっぱそこか、みたいな。

背景もいい。アメリカで社会問題となっている帰還兵たちの社会復帰を正面から捉えている。国に尽くしたのに裏切られたと感じ、苦しみ続ける男たち。一見帰国後の生活に問題なく溶け込んでいるように見えるルッソやカーティスも実はそれぞれの矛盾や良心の呵責を抱えている。一番苦労しているのが若いルイスで、途中まで境界線上でフラフラしていてどっちに転ぶのか読めなかったが、けっきょくダークサイドに落ちていってしまった。それまでの経緯も丁寧に描かれていて、大勢の人間を殺傷した彼も悪者と言いきれない切なさがある。周囲の人間の関わりかたによっては救われていたかもしれないのだが、じゃあどうしたらいいのかという明確な答えは見つからず、その曖昧さが曖昧なまま残るのに、そこまで後味が悪くないという不思議なエピソードだった。

そして銃規制に賛成するわけではないというスタンスも面白い。それをカレンの口から語らせるというのが大胆だし、銃規制賛成の上院議員がクソというのも私には新鮮な展開だった。まあパニッシャーで銃規制の方向は無理だろうけど、そこまではっきり主要な登場人物の一人(しかも若い白人女性ジャーナリスト)に言わせるというのは、この作品のスタンスを語るものとして大きいのではないか。

あとルッソね。ただのイケメンじゃなかった。
でも最後美しい顔をめちゃくちゃにされちゃう。今シーズン2を見てるけど、仮面をつけているルッソは本当にビリー・ルッソなの?

いったん決着がついたシリーズをどうやって続けるのか、それも気になる。

猫その後

野良猫を引き取って2年が経過した。
が、状況に変化はない。我々は清潔なトイレを保ち、1日2回エサをやるだけの人間である。相変わらず手を出せば引っかき、2m以内には近寄って来ない。

最近見たユーチューブビデオでは、野良猫を保護したらまずケージに閉じ込めて、人間に慣れるまでそこから出さないアプローチが紹介されていた。猫に相当なストレスがかかりそうなんだが、そうしないと引き取り先がないんですって。それはそうかも。

私も返品や交換したいが、返品先が引っ越してなくなっちゃったので、それもできない。

この前はベランダに降り立とうとするカラスに襲いかかろうとしていた。お陰でベランダに野鳥も来なくなってしまった。

野良猫を引き取って、今はすごく仲良しになって幸せな生活してますとかインスタやTwitterやFBに写真をあげて優しい私アピールしたかった私の目論見は見事に外れた。インスタもTwitterもFBもやってなかったのが不幸中の幸いである。

2020年の総括と来年の目標

久々のはてな
今年もあと数時間で終わりだ。
今年あったことをとりあえずまとめておこう。

1. コロナ
一番はこれよね。幸か不幸か、今のところ会社の業績には影響なし。残業代を出してもらえない月があったので、年収は少し減った。しかし今給与明細の整理をしていたら9月に多めに払われているっぽい月があったので、まあよしとしよう。

2. 友人が乳癌になった
中学からの友達で同い年なので驚いた。近所に住んでいるので、最近は週に一回は会うようにしている。私にできることはあまりないのだが、来年は寛解してほしい。

3.更年期だけど、体力がついてきた
不眠気味で体力には常に自信がなかったのだが、夜お風呂に入るとすんなり眠れることを今になって発見した。お陰で、週末にぐったり動けないことが減り、運動量が増えて元気になってきた。もっと早くに風呂に入る習慣をつけておけばよかった。

振り返ってもあまり特別なことはない平穏な一年だったと言えよう。来年はどうなるのかなー。

来年の目標は以下の通り
1. せっかく体力がついてきたので、何か勉強する
MOOCSVBAを学ぶか、現在の仕事の専門知識を学ぶかで迷い中。でもVBAかな。

2. 運動を続ける
週末は土日それぞれ10km走る。月に1回は15kmくらいの日帰り登山をする

3. 転職か副業
転職しないなら副業について検討すること。でも何を副業にできるのかがよくわからない。レッドオーシャンに漕ぎ出す気はないので、細々と独自路線を追及したい。
履歴書と職務経歴書の代筆がいいと思うのだが、客が見つからない。みんな金を払いたがらないのがネック。今は無料サービスして口コミで客見つけてくれって頼んでいるが、誰も客を連れてこない。私の支援で転職できたひとたちは複数いるのだが、残念ながらビジネスに展開する段階でつまずいている。
ただし、私は一貫性がないキャリアに嘘をつくことなくストーリーを持たせて履歴書、職務経歴書を書くのが得意なので、オンリーワンの作文職人としていずれ開花する予定。将来的には外国人にもサービスを拡充し、英語で聞き取った内容を日本語で表現する方向も検討中。

4. イライラしない
毎年実現できない目標だけど、いつかはイライラしない安定した人間になりたい

5. 洋服を買わない
コロナのお陰で今年の消費は抑えられた気がするが、まだ足りない。なんであるのに買うんだろう? 子供の時から服に執着があったからで、答えは明白。

目標がもりだくさんすぎて、既にもう実現は無理だなという気になっているが、まあいいや。とにかく今年はそんな感じ。

エンド・オブ・ステイツ / Angel has Fallen

ジェラルド・バトラー主演のシークレットサービス系アクション映画。「エンド・オブ・ホワイトハウス」、「エンド・オブ・キングダム」に続いて3作目。

リモートワークで日曜日でもあんまりすることがないので、アマゾンプライムで399円も出して見てしまった。

邦題より原題のほうがかっこいい。「Olympus has Fallen」、「London has Fallen」ときて「Angel has Fallen」。「Olympus」はホワイトハウスのコードネームで、一作目で主人公の同僚(コール・ハウザー)が死ぬ前に「Olympus has fallen (ホワイトハウス陥落)」と伝えながら敵に殺されてしまう。好きな俳優なので、そのシーンはよく覚えている。三作目のタイトルのAngelは主人公のマイク・バニングのことで、大統領の守り神が地に落ちたという報道がタイトルになっている。

2作目がとてつもなくつまらなかったので、3作目が出たのに驚いた。2作目は退屈すぎて最後まで見たことがなかったのだが、あれでアーロン・エッカートが演じていた大統領が死んだのかしら? 気がついたら副大統領だったモーガン・フリーマンが大統領に昇格していた。ジェラルド・バトラー以外に一作目から同じ人はこのモーガン・フリーマンだけで、あとは主人公の妻すら別人になっていた。

本作もストーリーは粗いがまあまあ面白い。細かいところに目をつぶれば楽しめる。ただハイテクとローテクがまざってるところがちょっとねー。最初のスーパードローンの攻撃とか、ハッキングで車を止めちゃうところとかは、最新技術の少し先をいく想像力が上手に展開していてよいのではないかと思った。シークレットサービスが弱すぎるけど。

それなのに主人公が車を盗むシーンはちゃんと見せない。このご時世、新しい車はハンドルの下の配線を少しいじってエンジンをかけるなんてできないんだから、最近の映画で車を盗む時は、皆さん大抵旧式の鍵を回さないといけないタイプの車をわざわざ探している。でもマイク・バニングが盗んだのは今どきのシボレーのピックアップトラック。それそんな簡単に盗めないんじゃないかな。

マイクの変人パパはニック・ノルティが好演。陰謀論者で水道も電気もない山の中で暮らしているくせに、監視カメラをいくつも取り付けて敵の襲撃をいち早く察知する。あかりもついてないのに、カメラとビデオは回っている。手先が器用そうだからきっとグリーンエネルギーの発電システムを使ってんのね。更に都合のよいことにパパは爆弾魔で、敵に大打撃をあたえてくれた。ただ、暇にあかせてパパが書いていた自伝がその後どうなったか気になる。

一番よかったのはマイクを追うFBIエージェント役のジェイダ・ピンケット・スミスだった。無表情な強い女って感じが素敵だった。「追跡者」のトミー・リー・ジョーンズみたいな役どころになるかと期待していたんだが、途中であえなく退場。好演していただけに残念。

敵の最終目的とかよくわからなかったが、この手のシリーズに深みを求めるべきではないであろう。いつもながら主人公が窮地を切り抜けて活躍できたのでよいとする。この分だと次回作もありそう。