パワハラ

最近の弊社の流行ワードはパワハラである。元々はある女性が転職してきたことが発端だった。彼女は経験者というふれこみだったので給料も高かったのだが、実は仕事がぜんぜんできず、ミスを連発した。結局半年で仕事についていけずに辞めたのだが、最後はパワハラされたから慰謝料よこせとボスを脅し、はした金をせしめて辞めていった。事実じゃないから突っぱねればいいものを、労基署という言葉でフニャフニャになるボスはすぐに屈した。まあ労基署が出てくると残業問題がばれちゃうので、すねにキズある身としてはつらいところだ。

全員がそのやり取りを見聞きしていたので、仕事はできないくせに妙に学習能力が高い者がその真似をするケースが出てきた。

割り振られた仕事に不満のある子持ちさんは、私にパワハラされているのでその仕事をさせられるなら辞めるとボスを脅した。パワハラしてねーよ。そもそも仕事で関わってないだろうが。

低品質の仕事を納期を遅らせて何とかこなしている無口さんは、期限管理をしてくれている同僚(20才以上年下)から怒られるので、パワハラ問題としてそれを労基署に相談したとボスに暴露し、自分の待遇改善を暗に訴えた。2, 3回きつめに注意されただけだし、お前そもそも外注契約じゃん。

周囲の人間が客観的に見てあり得ない事象をパワハラと訴えるのが弊社の一連のパワハラ事件の特徴である。当事者は言いっぱなし。証拠も証人も出てこない。

パワハラって何?と定義不明な言葉の一人歩きに困惑する私。要は言ったもん勝ちですか? 職場が、経営者がダメだからパワハラというパワーワードで待遇改善を勝ち取ろうとする人間が出るのか、本人の資質の問題なのか、最近の風潮に自分ものっちゃえというノリなのか。

パワハラという言葉が弊社においてはリトマス試験紙としてヤバイ奴をあぶり出す装置みたいな全く別の機能を備えつつある気がする今日このごろ。

それがよいことなのか悪いことなのか、半分当事者で半分傍観者の私にはちょっと判断がつかない。